賃貸借契約では、借主が退去する際には国土交通省のガイドラインを基本の考え方として、原状回復の義務を負うこととされてきました。しかし法律的な拘束力のなかったガイドラインに代わり、2020年4月より原状回復のルールについて民法規定が施行されます。ルール通りに行なわない場合にはどのようなペナルテイがあるのでしょうか。
原状回復の考え方、必要性
通常の賃貸借契約においては、原状回復義務が課せられています。賃借人は退去の際、自分が設置したものなどを撤去し、以前の状態に戻さなくてはならないことになっています。「以前の状態」ということであっても、自然な経年劣化などについては原状回復の範囲には含まれないとするなど、範囲の考え方は国土交通省のガイドラインがひとつの目安とされてきました。
しかし、ガイドラインは法律的な拘束力があるわけではなく、そのため原状回復の範囲についてはトラブルも多くなっていたのが実情です。このようなあいまいな解釈を明確化するために、政府は2017年に原状回復のルールを含めた民法改正を閣議決定しました。2020年4月から施行される民法により、原状回復については法律で正式に定められることになります。民法改正に盛り込まれることにより、今までは一般的な慣習としての原状回復の対応が、法律に基づいた「義務」に変わってくことが考えられます。
原状回復を行わない場合はどのようになるか
借主が通常と考えられる原状回復を行なわずに物件の返還をした場合、「原状回復義務を履行していない」ということになり、貸主は善管注意義務違反、原状回復義務違反を理由に、修繕の費用や損害賠償を請求できます。
原状回復が不履行のままでは、新たに他の借主に貸すことができなくなってしまい、その間に通常であれば賃料収入を得ることができた分に関し、損害が生じるという考え方から、このような措置がとられています。(全日本不動産協会)
また、解約時に返還される敷金の取り扱いに対して、費用分を敷金から控除されることもあり得ます。このような大きなトラブルに発展しないよう、原状回復については双方でしっかりと納得できるように話し合うことが良いでしょう。